今回は発達障害児のための放課後等デイサービス、エジソン放課後・高津(川崎市)にお邪魔してきました!
まず入ってびっくりしたのはオシャレな空間とスタッフさん&子どもたちの明るい表情。春休みでたくさんの子どもたちが早い時間から来ていました。
運営する株式会社アイムの佐藤典雅社長(写真右)は、ご自身のお子さんが3歳の検診で
自閉症とわかり施設を探している間に自分が福祉の業界へ。
実は元ヤフーであり東京ガールズコレクションの仕掛人のクリエイター。
事業戦略とマーケティングのプロが福祉の世界をどう見ているかお話を伺いました。
Q. どんなきっかけでどんな施設をつくろうと思ったんでしょうか?
子どもを入れる福祉施設を探していて入れたいと思える施設がない、福祉業界に
もっとセンスをいれたいと感じました。日本は自閉症に対する取り組みがアメリカ
と比べて30年遅れていると言われていますが、実際に自分の子どものことを考えた
時に親としても危機感を持ちました。
オムロンに勤める共同パートナーと運営していますが、
私は事業戦略とマーケティングの畑だったので、福祉業界にはないブランディングの発送を取り入れています。障害者の働く場所である就労支援では、あまりおいしくないクッキーや10本1円などの単位のペンをつくっている。だから売上が少ないし給料の還元も低いのが現状。それほどおいしくないクッキーを40種類つくるぐらいなら、おいしい鳩サブレ1つをつくったほうがいいんです。
介護を含めて福祉業界は福祉側の「決めつけ」が多いというのが印象。そして相手を弱者に見立てて
やってあげている、管理する、という考え方になりがち。弱者のために何かやってあげているという考え方ではだめなのではないかな、と。
だからうちは福祉業界出身者より偏ったフィルターをもたない普通の民間祈願出身や主婦がいいと思っている。
福祉とは働いている側だけの「想い」だけではだめで、「システム」です。足が悪い人のためにエレベーターを設置する。エレーベーターは「仕組み」なんです。
うちでは放課後デイの経営から言ったら意味のない27万円のシャンデリアを設置しています。これも居心地いいと人が感じられるための空間づくり(仕組み)のためです。見えない価値に投資してます。
施設は川崎で4カ所あり、年内に5カ所つくる予定です。ただ息子のニーズを満たすために始めた放課後デイなので、それ以降は増やすつもりはありません。次にとりかかるのは就労支援です。アイムに関しては規模よりも質を重視しています。
うちは子育てのひと段落した主婦が仕事復帰の入り口として入ってくださいます。子育てをしている主婦はたとえ障害者の親でなくても、肝が据わっているのでとってもいいんです。うちでは経験・実力より素質と相性重視です。だからこそスタッフが仲いいし、今までの職場の中で一番楽しいといってくれます。
スタッフの4割が保護者なので、働いている側も会社側もお互い状況がわかり、働きやすい環境になっています。そんなわけで利用者家族とスタッフが仲がいいのもうちの特徴です。
会社のルールはシンプルで、無駄は排除し効率重視。センスも重視。
福祉は施設や働く人の格好にセンスがないから「かわいそう」だとかいう印象を与えてしまう。
というわけでうちのスタッフはダサい服やスッピンNGです(笑)。
あとうちでは小さいお子さんがいるスタッフも多いので、何がとハプニングが起きがち。そういったことにも対応できるような柔軟性をもった勤務体制をもっています。
Q. 発達障害や自閉症というのはどう向き合うもの?
健常者も障がい者も僕は子育ての基本は変わらないと思っています。
1対1でしっかり向き合って1人1人に合った適正な子育てをすること。
世間的にみると、子どもをみないで画一的な受験を押し付けるから自殺するという悲しいニュースがある。
親は子供の特性をみて丁寧な子育てをする必要がある。
自閉症の特徴だって「特性」です。だからその子にあった子育てや環境を考える。
僕はうちの息子だって自閉症で大変だろうとは思いますが、イコールかわいそうとは思ってないです。
多動症の子なども集中力が続かなかったり落ち着きがないということが言われますが
パソコンとの相性がとてもいいことが多い。
教室にはVRやパソコンをたくさん置いてありますが、すごく集中して取り組んでます。
突出した能力を持っている子も多い。息子も小学生の時にいつのまにか好きな動画シーンを切り出して画像に連番をつけてフォルダに管理していました。7,000枚以上も管理していてびっくりした。Youtubeなどで使い方を調べていつの間にかうまく使いこなしているケースもある。
彼らは我々と違った思考回路や個性をもっているんですよね。
この業界にいて「子どもに問題はない」と感じています。
周りの大人が勝手に常識や過度な期待にあてはめているだけ。
親の受け止め方にも問題があることが多い。
保護者にも、大したことのないことを重たいことのように悩んでる方が多い。
まだ起きてもいないことを心配しすぎたり、物事を漠然と不安に思っている。
だからまず最初に何を悩むか決めよう、悩み解消に日付をきれないものは諦めよう、と伝えてます。
保護者の意識改革に取り組んで、日本人にありがちな閉塞感をなんとかできたらいいなとは思っています。だって閉塞的な環境では、障害をもっている子供たちにとってより生きにくい世界になるじゃないですか。
どんな子どもであれ、隠したり恥じたり遠慮するのではなく、誇りに思っていい存在だと思います。
昔から自閉症やグレーゾーンと言われる子たちはたくさんいた。
今は本当にこの子そう?と思う子も多いです。
昔に比べて、はじこうとする行政、先生、親のフィルターが早くかかってしまう。
過度な子どもへの期待・要望から勝手に心配している親が多いんです。
Q. ママハピが繋がるお母さんたちに伝えたいことは?
ママたちに必要なのは、どういう人材が今後どういう産業で求められているか知ること。
子供たちにサバイバル力をつけさせること。つまりたくましい感性です。
塾や受験で勝つ人材が社会で勝つ訳ではない。
自分の親をみて、昭和の人材を子どもの教育に求めることは今の時代ではリスクです。
これからはルーティンワークは機械・ロボット。求められるのはクリエイティブ力です。
エンタメ産業・クリエイターの世界は必要とされ続けるでしょうね。
Q. 佐藤社長はどうして今のセンス、サバイバル力を身に付けた?
僕は少年期はアメリカで過ごしたけど高卒。25歳で初めて社会人になった。当時ハワイにいて、給料なくていいからグラフィックデザインの勉強させてくれと丁稚奉公で飛び込みした。99年に日本へ引っ越したとき、デザインの世界は給料が低いから営業かな、と医療コンサル営業をやっていました。そのあとBSデジタル放送のプロデューサーをしたいたときに、お声がかかった会社に転職しようと思ったら9.11が起きて仕事がなくなったということでフリーターに。その後にヤフー株式会社の社長あてに面接依頼の手紙を書いてヤフーに入社しました。
採用の際に「仕事はないけれど雇う。そのかわり入社3ヶ月以内に自分のポジションを探せ」という変わった条件を出されました(笑)。そこで毎日社内を2回歩いて目が合った人と話してランチを取り付け毎日色んな社内ネットワーク作りと情報収集をし、提案書を出したり。社内マーケティングですよね。
その後、息子が3歳で自閉症だと診断されて、LAに引っ越そした方がいいと考えていました。そうしたら奇跡的なタイミングで、東京ガールズコレクションを手がけていた会社の社長に拾われてロスの子会社、本社の事業戦略室長を任されていました。息子が13歳になり、学校でも「できることはできるようになった」と言われたので、今度は子どもではなく自分のキャリアを優先しようと思って帰国しました。で、帰国したら福祉業界の壁をまのあたりにして、息子をきっかけに福祉業界に足をつっこんだわけです。アイムでは息子の成長にあわせて事業を垂直に、つまり縦に構築していきます。そんなわけでこの春からは高等学校の立ち上げをしますし、来年までには就労支援にとりかかる予定です。
佐藤さん、貴重なお話しありがとうございました!!
福祉にこそクリエイターとプロデューサーが必要という佐藤さん、
異色の経歴の彼が福祉業界に新しい風と文化を吹き込む姿が素敵でした。
アイムの放課後等デイサービス
自閉症がっちゃんブログ
http://blog.livedoor.jp/gacchan_blog/
ママハピ事務局 2017年3月 (取材:谷平)
<事務局の過去記事>
ママたちが体験!みんなの思い出、ぎゅっとコラージュ(ピクチャーパレット)
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